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β遮断薬は乳癌の転移を減らし乳癌死亡リスクを低減


英Nottingham大学病院Queen's Medical CenterのDes Powe氏らは、独Witten大学のFrank Entschladen氏らと共同で、乳癌女性を対象とする疫学的研究を行い、高血圧の治療を目的としてβ遮断薬の投与を受けていた患者群の遠隔転移と局所再発、乳癌死亡のリスクは有意に低いことを第7回欧州乳癌会議で報告しました。

過去に行われた細胞株を用いた研究は、β遮断薬がさまざまな癌細胞の増殖や移動を抑制することを示していました。今回の結果は、同様の現象が人体でも起きていることを示唆したものです。

過去に行われた細胞株を用いた研究は、β遮断薬がさまざまな癌細胞の増殖や移動を抑制することを示していました。今回の結果は、同様の現象が人体でも起きていることを示唆したものです。

実は、腫瘍にはこれらストレス・ホルモンが高濃度に存在し、癌細胞の増殖と移動を促進していることが分かっています。

高血圧治療を目的としてβ遮断薬を投与されていた乳癌患者さんには降圧剤を使用されていなかった乳癌患者さんよりも遠隔転移と局所再発が有意に少なかったことが報告されました。またβ遮断薬以外の降圧薬を投与されていた乳癌患者さんには、転移や乳癌死亡のリスク低減は見られなかったようです。

β遮断薬は低血圧、喘息、糖尿病などでは使用できませんので、適応範囲は限られてきます。副作用の出ない薬量で効果が期待できればと思います。

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→切除可能な原発性乳癌患者466人を分析対象とした。うち92人が高血圧患者で、乳癌診断時に降圧薬を処方されていた。β遮断薬の投与を受けていた43人(高血圧患者の46.7%)では、降圧薬を使用していなかった患者に比べ遠隔転移(p=0.03)と局所 再発(p=0.003)が有意に少なかった。また、乳癌死亡リスクも他の患者に比べ71%低かった(ハザード比=0.288、p=0.007)。

689人の乳癌患者に由来する組織標本を対象に、免疫組織化学分析とマイクロアレイを用いた発現プロファイル解析を行い、β遮断薬が作用 する受容体の1つであるβ2アドレナリン受容体(β2AR)の発現が、β遮断薬に対する臨床反応と関係しているかどうかを調べた。

β2ARたんぱく質の発現は小さな腫瘍(p=0.006)、悪性度の低い腫瘍(p<0.001)などで高かったが、発現レベルと臨床転帰の間に有意な関係は見られなかった。


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