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マンモグラフィによる乳がんスクリーニング 死亡率低下効果見られず


近年の乳がん死亡率低下に,マンモグラフィによるスクリーニング検査導入による直接的な効果は見られないことが論文報告されました(BMJ(2011; 343: d4411)。同博士らは,乳がん死亡の減少は治療の質向上と医療制度改善による効果が大きいとしている。

乳がんによる死亡は日本を除く多くの先進国で減少しています。それらの国の一部では,マンモグラフィによるスクリーニング検査が導入されて20年以上経過しますが,早期発見と治療の質向上が乳がん死亡の減少にどれだけ寄与したのかについて今回調査されました。

今回,乳がん死亡率の傾向を北アイルランド対アイルランド共和国,オランダ対ベルギー・フランドル,スウェーデン対ノルウェーという3つのペアで比較。スクリーニングプログラムを早く実施した国では乳がん死亡率が早く低下していると予想しました。これらの各ペアは同様の医療制度を背景とし,乳がん死亡の危険因子も同水準であるが,マンモグラフィスクリーニングの導入が後者の国で10〜15年遅かった。

そして世界保健機関(WHO)の死亡率データベースから1980〜2006年の死因データを,また各種文献・資料から乳がん死亡の危険因子,マンモグラフィスクリーニング,がん治療のデータを収集,分析しました。

その結果,1989年から2006年にかけての乳がん死亡は,北アイルランドの29%に対しアイルランド共和国で26%,オランダの25%に対しベルギーで20%,フランドルで25%,さらに,スウェーデンの16%に対しノルウェーで24%減少しました。

以上から乳がん死亡率の低下度は,スクリーニングを長期間にわたって実施していた国と,同じ時期にほとんどスクリーニングを実施していなかった国でほとんどが差がないことが明らかになりました。また,乳がんの減少は40〜49歳の女性で最も大きかったが,これはスクリーニングの実施とは無関係でした。

乳がんの死亡率低下には,治療の質向上と医療制度の改善が寄与したと考える方が理にかなっていると結論づけています。これはグールドらの疫学的調査でも明らかなように、先進国における原発建設の縮小も深く関係しているでしょう。

日本だけが先進国でも乳がん死亡率が高くなっている理由も原発54基が狭い面積にひしめいていることにその多くがあると思います。原発から日常的に放出される汚染水の海水汚染は、魚介類をよく食べる日本人に内部被ばくとなって還ってきます。


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