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センチネルリンパ節の潜在性転移は早期乳がんでは全生存率と関連せず


免疫組織化学染色(以下,免疫染色)を用いてセンチネルリンパ節(SLN)の潜在性転移を特定しても,乳房温存術を受けた早期乳がん女性の全生存率と関連しないことが論文報告されました(JAMA(2011; 306: 385-393)。

センチネルリンパ節(SLN)生検は早期乳がんの治療法に根本的変化をもたらし,重要性の不確かな微小転移や孤発性の腫瘍細胞が検出されるようになりました。また,センチネルリンパ節(SLN)や骨髄を免疫組織化学的に検査することにより,ルーチンの病理検査や臨床検査では発見できない潜在性転移が検出できるようになった。

しかし、そうした検査で早期発見したとしても早期乳がんの生存率と変化がないという衝撃の内容です。

今回,早期乳がん患者のセンチネルリンパ節(SLN)および骨髄標本を免疫染色して得られた潜在性転移と生存率との関連を検証する観察研究を実施しています。対象は,1999年5月〜2003年3月に,126カ所で実施されました,米国外科医学会(ACS)腫瘍グループのZ0010試験に登録された浸潤性乳がん(臨床ステージはT1〜T2N0M0)患者5,210例。全例が乳房温存術を受け,センチネルリンパ節(SLN)生検が行われました。当初,手術時の骨髄穿刺は任意であったが,2001年3月からは必須となりました。

骨髄標本と,センチネルリンパ節(SLN)標本のうち通常のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色で転移陰性と判定された標本が中央検査機関へ送られ,免疫染色が行われました。主治医には結果を知らせないようにました。

センチネルリンパ節(SLN)標本5,119個(全体の98.5%)中3,904個(76.3%)がHE染色で転移陰性でした。そのうち,免疫染色で3,326個中349個(10.5%)が陽性となりました。骨髄標本の免疫染色では,3,413個中104個(3.0%)が陽性となりました。

すべての患者を2010年4月21日までフォローアップしたところ,追跡期間(中央値6.3年)中に453例が死亡し,376例が乳がんを再発しました。

解析の結果,センチネルリンパ節(SLN)標本を免疫組織化学的に検査することにより,通常の病理検査では発見できませんでした。乳がんの潜在性転移が検出されても,死亡や再発との間に有意な関連は見られませんでした。免疫染色でセンチネルリンパ節(SLN)が陰性の乳がん患者さんでは5年全生存率は95.7%,陽性の乳がん患者さんでは95.1%。5年無病生存率もそれぞれ92.2%,90.4%と潜在性転移の有無による有意差は認められませんでした。

この結果を論理的に解釈すると、早期の乳がん患者に対しセンチネルリンパ節(SLN)生検や骨髄穿刺による生検をルーチン化することは意味がないことになります。検査もすべては予後に結びついてこそ初めて意味があるものだからです。


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