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乳がん患者さんへのMRI検査:施行増加も恩恵少ない可能性


MRI検査は,家族歴や遺伝子変異など遺伝的に乳がんリスクが高い女性のスクリーニングに有用な検査法であり,またマンモグラフィや超音波検査に比べてがん検出感度が高いとされ,ここ数年,臨床現場で広く導入されています。

今回、乳がんのスクリーニングや治療方針決定の指標としてMRI検査の施行頻度が増加していますが,その有益性を示すエビデンスはほとんどないことが論文報告されました(Lancet(2011; 378: 1804-1811)。

MRIによって,乳房温存術を施行する患者の選定精度が向上したり,初回の外科的切除で断端陰性が得られる可能性が高まることを支持するデータはないことが示されています。

MRIは診察やマンモグラフィ,超音波検査などの従来の検査法に比べて,術前化学療法後のがん残存の程度や治療に対する反応の評価については信頼性が高いことが示唆されています。費用対効果ではMRIはスクリーニング検査には向いていない検査だと考えます。

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→今回,MRIの有用性を検討するため,PubMedやコクランなどのデータベースを用いて,過去10年間に発表された関連論文(アブストラクト262件,論文87件)のレビューを行った。

その結果,乳房温存術施行前の女性の評価にMRIを使用しても,乳がんの検出感度の高さが手術成績の向上や良好な予後につながるとするエビデンスは得られなかった

また,良質な臨床試験の数も限られており,対側乳がんの発症や同側乳がんの再発といった長期的な臨床アウトカムに対するMRIの影響を明らかにすることはできないとしている。

MRIの真の価値は,小規模ながんの定量化ではなく,生物学的挙動を予測できることにあると考えられる。磁気共鳴分光法(MRS)により検出可能な細胞内代謝のごく初期の変化は,治療に対する反応を予測すると見られ,大規模臨床試験でその妥当性が確認されれば,有益でない化学療法の継続を避けられる可能性があると結論付けている。


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