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乳がんのQ&A

乳がんでお悩みの多くの方から当研究所に寄せられたご相談内容の一部を掲載いたします(個人情報は抹消しております)。ご自分の今後の治療にご活用頂けたら幸いです。

Q1.乳がん検診のマンモグラフィという検査で異常とされました。乳がんの可能性が高いのでしょうか?

A.乳がん検診でのマンモグラフィ検査では「偽陽性」率が高い、つまり正常なのに異常と診断されることが多いことを知っておいてください。

乳がん検診でマンモグラフィを受けた方が実際には癌ではないのに「陽性」とひっかかる率は10.7%という高率に上ります。さらに、10年間、毎年乳がん検診でマンモグラフィを受け続けた場合、「偽陽性」で「異常」と告げられる確率は約50%つまり約半数の人が正常なのに異常と診断されるのです(Fletcher SW, et al. Clinical practice. Mammographic screening for breast cancer. N Engl J Med. 2003;348(17): 1672-80.)。

デンマーク・コペンハーゲン大学(ノルディックコクランセンター)のKarsten Jørgensen氏らは同国内のマンモグラフィによる乳がんスクリーニングの効果を検証し、現在の同国のスクリーニング実施地域における乳がん死亡の減少率は非実施地域とほとんど差がないか、むしろ非実施地域で大きい傾向にあったことが報告されています(Jørgensen KJ, et al. BMJ 2010; 340: c1241.)。

40−69歳の女性にマンモグラフィを施行することでの乳癌死減少率は「15%」という報告もあります(Screening for breast cancer: U.S. Preventive Services Task Force recommendation statement. Ann Intern Med. 2009;151(10): 716-26)。

ですから、乳がん検診でのマンモグラフィ検査の異常は即「乳がん」を意味するものではなく、何らかの組織が異常に映った可能性も高いのです。ですから、落ち着いて次の検査を受けられてください。

乳がん検診において、偽陽性でひっかかった方が被る「害」は、生検(異常部分と思われるところを一部外科的に取り除いて検査する)などの不必要な検査を受けたり、不必要な治療を受けたりすることにとどまりません。「癌の疑い」を告げられたことによる心理的ストレスに晒されることになります。 この心理的ストレスで乳がんを発症する可能性も否定できないのです。

以下に昨年米国で問題となった乳がん検診のガイドラインを掲載いたします。

●「合衆国予防医療タスクフォース(United States Preventive Services Task Force,以下タスクフォース)」が発表した乳癌検診についての新ガイドライン

  1. 40−49歳ではルーティン・マンモグラフィを実施すべきでない。
  2. 50−74歳にはルーティン・マンモグラフィの実施を勧める。ただし、頻度は毎年である必要はなく2年に1回でよい。
  3. 75歳以上に対するルーティン・マンモグラフィの有効性を支持する証拠はない。
  4. マンモグラフィに加えて医師の視触診を実施することの有用性を示す証拠はない。
  5. 患者に「自己触診法」を教育すると、不必要な生検・画像診断の数が増えるとの証拠があり、教育はしないほうがよい。

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